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業界インタビュー

アロハス 代表取締役 吉原亘氏

2007/04/24

鎌倉ツリープ」をはじめ、地域に根ざしたさまざまなサービスを展開しているアロハス株式会社の目標や、地域コミュニティとウェブ・コミュニティの連携で見える可能性についてうかがった。

対談

アロハス株式会社 吉原亘氏 × デジパ株式会社 桐谷晃司

桐谷

「鎌倉ツリープ」はウチの社内でも評判が良くて、以前から是非お会いしたいと思っていました。「鎌倉ツリープ」を立ち上げたのは1年半くらい前ですよね。

吉原

ありがとうございます。「デジパ賞(Movable Type コンテスト 2006)」のときにお会いできなかったので、今日ようやくお会いできてたいへん光栄です。平成17年10月3日にアロハス株式会社を立ち上げまして、その年の12月に「鎌倉ツリープ」をスタートさせました。

桐谷

それまでもずっとウェブの仕事をされてたんですか?

吉原

新潟県出身で、ハワイ大学ヒロ校に留学していました。半年くらい東京に住んで働いたんですが、ここはちょっと水が合わないと感じて、そのあと東京都の離島、人口が200人しかいない青ヶ島で村役場の職員をしました。志望動機のところに「シンプルな生活がしたい」と書いたら採用されちゃって(笑)。

その後、転職をして3年半くらいウェブサイトの企画設計をやっていました。日々新しいことにチャレンジしたり、お客様のリクエストに応えたり、ウェブサイトを作る仕事には楽しさを感じていましたが、クライアントのニーズを満たすだけでは物足らないと感じて、アロハス株式会社を立ち上げました。

桐谷

なぜ鎌倉に着目されたんでしょう?

吉原

転職をきっかけに島から出て、都心の近くにまた住むことになったわけですが、都心は合わなかったので鎌倉に住むことにしました。住んでみるといろいろなことに気がつきました。

そのころ鎌倉の商店街はシャッターを下ろしたお店も多く、地域として元気がないように感じていました。それでいろいろ鎌倉について調べてみると、鎌倉の観光というのはここ10年間で400万人くらい観光客が減っていたんです。ピークで2200万人いた観光客が、平成17年くらいには1800万人にまで少なくなっていました。

相対的に見ると京都がすごく伸びていて、首都圏周辺の観光地も増えている。こうした競合の影響があるとしても、どうしてこんなに落ち着けて、都心近くにある観光地に元気がないんだろう? もっと住みやすい社会になっていくには、足元の地域、街が元気じゃなければつまらない。だったら、自分が少なからず学んできたウェブの知識を地域の活性化に役立てないかと考えました。

そこでツリーブというサイトを立ち上げて、より多くの方に鎌倉の魅力を知ってもらいたいと思ったのが素朴な動機です。

桐谷

鎌倉はお住まいになってどれくらいですか?

吉原

約7年になります。まだ前の会社に在籍したいたとき「そろそろ次のステップとしてやりたいことがあるんですが」と社長に話してみると「転職なのか、何のことだか分からない」と言われて(笑)。転職と言ってもどこも引き取ってくれるところはないだろう。じゃあ自分でやるしかない。ということで、事業計画を作り始めて、2005年のゴールデンウィークでかなりのところまで仕上げました。

ゴールデンウィーク明けに電車の中で日経を読んだら、アーリーステージを対象としたベンチャーキャピタルが事業計画のコンテストをやっていて、優秀な案件には投資すると書いてありました。「あ、ちょうどできている」(笑)。そこで応募してみたら、紆余曲折はありましたが、投資していただけることになってスタートが切れて、偶然にこうなってしまいました(笑)。

吉原亘氏、桐谷晃司写真

桐谷

そんなもんですよね。何かと何かの運命が結びついているんでしょう。ところで、地域に根ざし「鎌倉の魅力を知ってもらいたい」ということでやっていらっしゃるわけですが、ビジネスモデル的にはどうなっているんでしょう。

吉原

ビジネスモデル的には、B to C でいうとまず通信販売。それと体験型のワークショップを毎週末催しています。B to Bでいうと、商品の卸、「ツリープ」の観光コンテンツを江ノ島電鉄様へ提供しています。それとすこしずつですが広告も入ってきています。ひとつは地域のお店などのローカル広告。広告といってもバナーではなく、しっかり取材させて頂いて紹介する記事広告的な内容です。

もうひとつはビデオブログ的な演出のオリジナル番組の「鎌倉日和」。ポッドキャストで好評だったこともあって、デジカメメーカーさんから引き合いをいただいています。地域の商材をブランディングするというのもありますが、自分たちのロハスというコンセプトをもう少し強く打ち出していくことで、CSRに取り組む企業のPRに貢献できないか、ブランディングに貢献できないかと考えています。PVだけの比較じゃなくて、「鎌倉ツーリプのコンテンツは、自転車やハイブリッド車、電気スクータなど自然にやさしいエネルギーで作られています」みたいな、そういう部分を「これらの企業がサポートしています」みたいな感じで、CSRに取り組む企業のブランディングに貢献できればと考えています。媒体価値は単にPVだけでなく、コンセプトの打ち出し方にもあるわけです。最初にポータルサイトといったところで媒体力もない、ブランドもない、差別化もできないというなかで、やれることを少しづつやっているうちに、やっと広告にお金を払ってくれるところが出てきました。

小資本でビジネスを立ち上げようとしたとき、自分たちが短命で終わっては元も子もありません。持続可能な会社にしていかなければならない。いろいろ読んだ本の中で非常に参考になったのが「ランチェスター戦略」という考え方です。特に目を引いたのが「弱者が強者と戦うとき、エリアを絞って戦えば勝ち目がある」というくだりや、「接近戦のほうが互角に戦える」というものです。それを読んでなんとなく鎌倉でやろうと思ったことが、理にかなっている事が分かりました。

たとえば通販で商材を発掘するとき、口説きたいお店にうかがうと必ず大手ECモールさんから電話がかかってくるんだよと言われます。でもそれはただの電話なんですね。そこへ僕らが「こんにちわ、実はこういうことやっているんでけど・・・」とうかがうと信用してくださるんです。「じゃあやってみようか」と意外にスムーズな展開も多いです。大手ECモールさんがブランドを背景に電話で口説こうとしているのに対し、僕らの接近戦の方が効果を上げているわけです。地域には凄く魅力的な商材がいっぱいあるのに、僕らは入手できても彼らはできない。最近は地域のなかでも認知されるようになってきて、お店の方から鎌倉のポータルサイトに載りたいんですがというお問い合わせを頂くようになりました。

桐谷

物流もやられているのが凄いなあと思います。御社だからこそできるんでしょうね。

吉原

規模が小さくアナログ的な運営だからできているんです。大手がやらないこと、やれないことをベンチャーがやることに意味があると思います。1回の買い物でいろいろなお店のものが買えて、しかも一箱で送ってくれるというのは大手ECモールさんにも真似できません。これもお客様にとっては利便性のひとつかなと思います。

桐谷

1年や2年なら誰でもできるんですが、やはりこれを続けることが大切ですね。

吉原

最近のネットビジネスは短命になってきているので、3年くらいでひとつの大きな勝負になるのかなと思っています。漠然としたものですが、今後他地域へ展開していきたいという考えもあります。今モデルづくりをしているのですが、これは自分たちの力だけではどうしようもない。これからどういう仕組みでやるのかも含めて、今2期目なんですが、3期目にはなにかしらカタチにしたいと思っています。

今、みんなの経済新聞ネットワークというのが他地域に展開し始めていて、興味を持ってみています。たぶんテンプレートはなにかのCMSを使っていて、簡易に更新できるローカルサイトになっています。ここは、今見ているシブヤ経済新聞に六本木経済新聞の見出しが出てきたりして、横展開がうまく作られています。ツリープというブランドがひとつ確立できれば、こんな感じに横展開していくときスムーズになるじゃないかと考えています。

桐谷

日本全国に○○ツリープができるという・・・

吉原

いや、まだわからないですけど(笑)。一応当初の思惑としては、もしこのモデルでお客さんが喜んでくれて、ツリープをご利用くださるのであれば、他地域に展開する価値はあるのではないか。別に自分たちが儲けたいというのではなくて、ニーズはあるのではないかと考えています。そしてほかに同じようなことを考えている方いらっしゃれば、そういう方達と一緒にやれるようにしていきたいと思っています。

沖縄とか屋久島とか一部の地域で人口が増えているのに対して、反対に少なくなっている地域もあります。他地域に展開していくときには、また違った可能性といいますか、まだ認知されていないけれども日本の伝統文化やライフスタイルが残っていて、それをうまく伝えることで、何かお役に立てるのであればやりたいと思います。

桐谷

ネットのコミュニティってもうマクロ的なものは飽きてしまっていて、細分化されていく流れが起きていますよね。そして地域の活性化というのは大きなマーケットであり課題でもある。そういう意味ではこれを成功させたら、間違いなく地域活性化のプロフェッショナルとして認知されますね。

吉原

まずは自分たちの会社がしっかりして、成果を出していくていくのが大事ですね(笑)そのために顧客とのコミュニケーションをもっと大事にしてやっていきたい。いまはワークショップにも力を入れています。

沖縄でも屋久島でも、面白い体験型ワークショップがいっぱいあるのに、なんで自然がこんなにある鎌倉にはないんだろうと。最近は鎌倉でよい先生とたくさん知り合えて、今度は銀座でワークショップをやろうという新しい展開も出てきています。キャリア志向の学びというのはたくさんあるのですが、それとは別に、自分の内面から幸せになるための学びを欲している人も結構多いんじゃないかと思っています。僕らは味噌づくりをやったり、マクロビオティックの料理教室をやったりしているのは、そういうニーズを満たすためなのです。

桐谷

そういう意味では、ウェブサービスを提供する会社という認識はあまりないんでしょうね。

吉原

ウェブはマーケティングのツールでしかありません。もともと小資本なので、ウェブサイトにあまりお金もかけられない。でも Movable Typeのような安価なツールが出てきたり、レンタルサーバもデジカメもすごく安くなってきました。それで自分たちがやりたいビジネスに集中できる。1?2年前だったらウェブサイトの更新をしたりページを作ることからして、すごく苦労していたはずだと思うのですが、それらの作業にかかる工数を省力可できるようにウェブが進化した、このタイミングではじめられてラッキーでした。

鎌倉ツリープキャプチャ画像
(上記画像左側)鎌倉・江の島の観光・生活情報ポータルサイト「鎌倉ツリープ」

桐谷

ちょっと聞きたいんですけど、「市民記者」というのがありますよね。あれはどういうものなんですか?

吉原

行事であるとか、自然環境であるとか特定の分野に精通した方に、生活者としての視点で記事を書いて頂く試みです。ただ自分たちはSNSをやっているわけではなくて、いまはサイト全体として、30歳前後の女性という読者を想定していて、そうした読者に向かって記事を書き、お店や商品を選び、ワークショップを企画しています。一定のターゲットに向かって編集されたコンテンツを配信するので、まったく自由に書いていただくわけではありません。ですから正直なかなか難しいところがあります。良質なコンテンツを提供するために一般の方のお力をお借りしたいのですが。

桐谷

ウチも自分たちでSQ Life (SQライフ)というスピリチュアル系コンテンツをやってるんですけど、やはり同じ問題があって、自分たちである程度セグメントしていかなければならないというジレンマがあるんです。

吉原

そうですね。社内でコストもかかってきますし。ただ、あのスピリチュアル系のコンテンツには興味がありますね。ロハスとも関わる部分があって、ウチのワークショップでもスピリチュアル系の引き合いは多いです。

桐谷

実はワークショップ・オタクで(笑)何か資格を取りたいというより、自分の内面を高めるため20代の頃からいろいろやってきました。そういう経験からビジネスに持ってくるというのはありますね。

吉原

確かにビジネスの発端ってそういうことが大きいですね。儲けようと思って、儲かりそうだからやるっていう人も多いと思いますけど、自分の関心のあるところでもっと多くの人が幸せになるためにやるほうがいざというとき強いと思いますね。

桐谷

お忙しいところありがとうございました。

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