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業界インタビュー

ソーシャルビジネスの未来

2008/03/17

クリック募金サイト「イーココロ!」を運営するなど、世界の様々な問題解決のために事業展開するソーシャルベンチャーの関根健次氏に、ソーシャルビジネスに関わった経緯とその現状、新たな取組みや未来への展望についてうかがった。

桐谷

関根さんが起業した頃、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)という言葉はまだ日本になかったとかもしれませんね。

関根

いや、あったと思いますが、ほとんど認知されていませんでした。ソーシャルアントレプレナーが知られるようになったのはここ1、2年のことです。

インタビューの様子写真

桐谷

そもそも起業された背景にあったものは何でしょうか。

関根

インターネット広告代理店で忙しく働いていましたが、ストレスと過労で倒れ、救急病院に運ばれました。そのとき点滴を打たれながら「このまま死んじゃったら、オレの人生はどうだったのだろう」と思いました。そこから「自分がやるべきこと、やりたいことは何なのか」と考えるようになって、それまでの自分の人生が上面だけのものだったことに気づきました。

ただ、そのときはまだ何をやりたいのかが見えてなかったのですが、会社を辞め、半年くらいかけて世界を回ろうと思っていました。ところがそこで現ECナビの社長から声がかかり、いろいろ相談するうちに「SOHOでやるより会社にした方がいい」ということで、出資をうけて会社設立に至りました。

桐谷

そのときはクリック募金のモデルではなかったのですか。

関根

半年間かけていろいろな事業をやってみて、やりたいことを見つけようということでしたので、正直なところ決まっていませんでした。半年間やってみて出した答えはやはりといいますか、「世界の問題解決」ということでした。

「誰かが何かを始めるときはいきなり始めるのではなくて、コップに水が少しずつ溜まっていって、そのうち入りきれなくなって溢れはじめます。その溢れ始めたときに行動に移していく」と言う話を聞いたことがありますが、NGO、NPO募金サイト「イーココロ!」を始めた瞬間というのは、まさにそういう状態だったのだと思います。

インターネット広告代理店時代にも寄付の仕事を経験しましたし、ECナビの前身であるアクシブドットコムが「kifu.ne.jp」というドメインを持っていましたので、そのときにクリック募金の仕組みを提案していました。そのときはできなかったのですが。

桐谷

パッとひらめいたというよりは、暖めていたものが熟して、自分のミッションとなって事業を始められたわけですね。

関根

なんとなく、なんとなくやっているうちに「これじゃん!」(笑)みたいな。26歳のときにやっとやりたいことが見つかりました。

桐谷

「イーココロ!」はそれからどう推移しているのですか。

関根

最初の2期は赤字だったのですが、3期目に調子が上がって黒字化しました。ただ弊社はパラレルに経営しているので、「イーココロ!」のほうはまだまだでした。ネットマーケティングのコンサルティングで稼いだお金をサイト構築に投入して、3年間機能改善を続けてきました。

「イーココロ!」はユーザがバナーをクリックして、スポンサー企業のサイトにアクセスすることによって無料で1円募金ができる仕組み。一方でスポンサー企業には2円を負担していただいています。

2003年5月に「イーココロ!」をスタートさせましたのですが、最初の半年間の寄付金合計が2万数千円。とてもやっていけない数字です。2006年1年間の総額が2百数十万円。企業からいただく広告費の半分が寄付、半分が手数料ですが、1年間で2百数十万円では事業としては成り立ちませんよね。それが去年になってやっと1千万円を超えるようになりました。一昨年から昨年で5倍の伸びとなったことで、ようやく立ち上がったというところです。

桐谷

「イーココロ!」単独での黒字化はまだですか。

関根

まだできていません。今年は年間3000万円の募金目標を立てていますが、大分見えてきています。今年中に「イーココロ!」単体でほぼ黒字化できると思います。

桐谷

ところで支援先のNPO、NGOをだれがどう決めているのでしょうか。

関根

クリック募金の場合はスポンサーが決めています。弊社で支援しているところが100団体ほどありますが、たとえばプリンタを製造している企業であれば、紙を大量に使うので植林活動を行っているようなNPOというように、弊社でマッチングさせています。

「イーココロ!」はクリック募金のほか、お買い物で募金ができる「ショッピング募金」、資料請求やクレジットカード発行で募金ができる「アクション募金」など、基本的には会員制度になっているポイントサイトなんです。どんなことをやってもポイントがたまるのですが、一般のポイントサイトと違うのは、そのポイントを商品や現金化することが一切できないところです。全額NPO、NGOへの寄付になります。

そのほかユーザさんより「無料で募金をできるのはいいが、何か災害などが起こってすぐ募金したくてもできない、何とかしてほしい」というリクエストがありました。そこで、その場でクレジットカードを使って募金できる仕組みも始めました。これも「イーココロ!」に入っているすべての団体から寄付先を選べます。

あと、他のポイントサイトにはないユニークな機能として、NPO、NGOに活動報告を記載できるようにしていますが、これをユーザさんが読んで支援したいと思ったときに自分が持っているポイント、1ポイント以上でその場で寄付できる仕組みを用意しています。

桐谷

それから坂本龍一さんとの提携してやられていることについておうかがいしたいのですが。

関根

坂本龍一さんは、温暖化による危機的状況を見て、森づくり、植林活動にフォーカスした「more trees」という団体を昨年立ち上げられました。その「more trees」をいろいろな人に知ってもらうためにクリック募金をしたいと考えられていて、たまたま「more trees」の事務局を訪れたところ、いっしょにやろうという話になりました。そこからプロジェクトが始まりました。

インタビューの様子写真

桐谷

そのほかにも何か新しいことを始められていると聞きましたが。

関根

オンライン署名サイト「署名TV」ですね。インターネット上で署名をすぐ始めたり、署名に参加できるサイトです。不思議なことに今までなぜかなかったんですね。

署名活動に参加したいときに、どこで署名するかといえば通常、街頭ということになります。ということはたまたまその場所にいわせないと参加できないわけです。それがインターネットを使って好きなときにできるようになれば、もっと署名も集まるのではないか。数が多くなればインパクトが増える。ということは企業や行政がそれを受け取ったとき、変化が起こるのではないか。

「署名TV」の目的は、よりよい方向に社会が動くために、もっと活発に参加できるフィールドを作っていきたいということです。

桐谷

最近関根さんみたいなソーシャルアントレプレナーになりたいという若い人が増えてきています。その理由は何だと思いますか。

関根

2つあると思います。ひとつはそれだけ日本を含めた世界が危機的状況だということです。インターネットメディアによって情報の伝達スピードが上がり、今まで見えなかったことが見えるようになって気づき始めたのだと思います。さまざまな問題を何とかしたいと思ったとき、その何とかしたいを自分でやってしまうのがソーシャルアントレプレナーですが、最近の動きで何が違うかというと、若者が立ち上がってきていることです。

もうひとつは日本は戦後、経済発展だけを目指してきたわけですが、その目指した先では森が失われ、リストラなどいろいろな問題があることが見えてきた。そこで社会に対するいろいろな疑問が生まれたのだと思います。利益の追求だけではない、地球、社会との持続可能なビジネスモデルが求められています。

桐谷

今後組織として、個人として何を目指していくのでしょうか。

関根

私の最終的な目標、夢と言った方がいいかも知れませんが、とにかく多くの問題解決に貢献していきたいというのがひとつ。それと、たとえば1億も2億もあるといわれる地雷を撤去してゼロにしていくこともあるのですが、そもそも地雷を敷設する必要のない社会づくりに貢献していきたいです。根本的な部分が変らなければ、解決にはならないからです。

具体的なところでは、そもそも私がこの事業を始めたキッカケとなったパレスチナのガザ地区へ、2006年11月に行ってきました。はじめていったのが1999年。7年経っていたわけですが状況はさらに悪くなっていました。

私が訪問した数か月前に、ガザ地区はイスラエルにかなり空爆されていました。どこを空爆されていたかというと、発電所、大学、政府の建物、高速道路の橋などです。生活のインフラとなるものを破壊され、封鎖状態にありました。破壊された橋を見たのですが、それはパレスチナの人の生活を支援するために日本もお金を出したものなんですね。ということはわれわれがお金を出しているわけです。イスラエル・パレスチナ紛争にももう少し関心が高まればいいのですが。

ちょっと話がそれましたが、このように破壊されたインフラは、再建のために再び日本などのお金が入ることになるでしょう。そしてまたそれが破壊される可能性がある。情勢が不安定だとせっかくの支援もまた無駄になってしまう可能性があるということです。いくらお金があっても足りません。

ということから、再建のための支援も重要ではありますが、こういう問題は支援だけではダメだということが分かります。情勢を安定させるための外交努力も必要です。問題の当事者ではない日本が仲裁に入れる余地は大きいと思います。

今回立ち上げた「署名TV」は、たとえば日本の外交についての意見を集めて外務省にぶつけるような使い方ができるものです。戦争・紛争、環境問題に飢餓・貧困。人類が直面する問題は大きいですが、今後も問題解決のためのソリューションをつぎつぎと提案していこうと考えています。

桐谷

お忙しいところありがとうございました。

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